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きもだめし

大多喜町の昔ばなし

1
むかし、むかし、上瀑村(かみたきむら)に三人の若者がいました。三人は集まると
「おれが一番強い」
「いや、おれだ。おれが一番強くて勇気がある」
と、たがいにじまんばかりして、ゆずりませんでした。

2
ある夏の夜でした。だれが一番強くて勇気があるか、きもだめしをすることになりました。 村はずれにある墓地は、このところ幽霊が出るといううわさでもちきりです。そこで、お墓に杭(くい)をうって帰ってくることにしました。
喜助(きすけ)は杭(くい)と木槌(きづち)をもってお墓にむかいました。しばらくすると
「少しも恐くなかったよ」
真っ青な顔をして帰ってきました。平助(へいすけ)も
「残念、幽霊におめにかかれなかったよ」
と足をガクガクさせながら帰ってきました。
最後に、裕太(ゆうた)が杭と木槌をもって出かけました。裕太はいつも「おれが一番強い」といっていたものの、じつは一番おくびょう者でした。
墓地は真っ暗で、なまあたたかい風がときおり吹いて、今にも幽霊が現れそうでした。裕太は急いで杭を打ちました。 (さあ、打ち終わった)、ふり向いて帰ろうとしましたが、うしろから着物のすそをひっぱられ、進むことができません。
「キャー で、でたー。幽霊がでた。たすけてー」
裕太はてっきり幽霊につかまえられたと思い、気絶してしまいました。
裕太の帰りがあまりにおそいので、喜助と平助が行って見ると裕太は墓のそばにたおれていました。
「ユウタ、ユウタ・・・」
よびおこすと、ようやく息をふきかえしました。
裕太が幽霊につかまえられたと思ったのは、自分で自分の着物に杭を打ちつけてしまったからでした。

3
裕太は、自分はよわ虫であわてものであることに気づきました。このあと(これからは、なにごとも落ち着きがかんじん)と、心がけるようになりました。 それで、やがてしっかりした立派な男になりましたとさ。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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つか坊と姉ちゃん