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怠け者の話

怠け者の話

スズメとツバメ(親孝行な雀)

御宿町の昔ばなし

むかしむかし、ずーっと昔のことでした。
ある秋の昼下がり。神様が御宿の浅間山(せんげんやま)のてっぺんに立って、田んぼをながめていらっしゃった。
「今年も稲のできぐわいはいいのう。人間も動物も安心して冬を迎(むか)えられる」
神様はひとりごとをつぶやいていると、一羽のトンビがあわてて飛んできました。
そうして、
「神様、神様、たいへんです」
と、早口にいうのです。
「そんなにあわててどうしたのだ」
神様がたずねると
「どうしたのって、小鳥たちのお父さんが病気です。ひょっとしたら、命があぶないかもしれません」
といいました。神様はすぐに
「そりゃ大変だ。すぐに小鳥たちに知らせなくては」
というが早いか
カーン、カーン
と鐘(かね)をならしました。
「どうした。どうした。何がおきたのだ」
とスズメやツバメやカラスやコウモリが急いで浅間山(せんげんやま)にやってきました。
「じつは、お前たち小鳥のお父さんが病気で命があぶないというのだ」
と神様が説明すると
「それではすぐに一族(いちぞく)を引き連れてまいります」
と言うとそれぞれの家にむかいました。
スズメは
「とりあえず急いでお父さんの所に行かなくては」
とスズメ一族(いちぞく)でお父さんの所に飛んで行きました。おかげで今にも死にそうな小鳥のお父さんに会うことができました。
ツバメの一族(いちぞく)は
「出かけるのだから、身なりをきちんとしてお化粧(けしょう)をしよう」
とたんねんにお化粧(けしょう)をしました。おかげで、お父さんの最後には間に合いませんでした。
後でこのことを知った神様は
「スズメ一族(いちぞく)の孝行ぶりはえらい。たいしたものだ。ほうびにこれからは人間と同じように穀物(こくもつ)を食べることをゆるそう」
とおっしゃいました。
一方、おくれて来たツバメたちにはこうおっしゃいました。
「親の死に目に化粧(けしょう)をしていておくれるとは、何事じゃ。今後、お前たちは穀物(こくもつ)いっさい口にしてはならない」
「は、はい・・・・・」
「稲の実るころになったら、日本の国にいてはならない」
とおしかりになりました。
一方、遊び好きのコウモリは
「お父さんの病気はすぐによくなるだろう。それよりも遊ぶほうがいそがしい」
とお父さんの死んだのも知らずに遊んでいました。神様は大おこりされました。
「お前たちは親が死にそうだというのに遊んでいるとは何事じゃ」
顔を真っ赤にして怒鳴(どな)りました。コウモリはただ下をむいて神様のおしかりをきくしかありませんでした。そして最後に
「お前たちのようなものは鳥の仲間から追放(ついほう)じゃ」
とおっしゃいました。鳥の仲間から、のけものにされたコウモリは獣(けもの)の仲間に入ろうと獣(けもの)たちの所に行きました。しかし、獣(けもの)たちも
「親不孝(おやふこう)なやつとは仲良くできない」
と仲間にいれませんでした。それでしかたなく、こうもりは昼間、暗いほら穴(あな)にかくれ、じっと昔の仲間の小鳥たちの遊び声をきき、夜になるとこっそりほら穴(あな)から出て食べ物をさがすようにようになりました。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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