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楽しい話

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へっこき嫁さま

御宿町の昔ばなし

1
むかしむかし、あるところの一人むすこが、よめさんをもらいました。よく働く、きれいなよめさんでした。

ところが五日たち、十日たつと、だんだんよめさんに元気がなくなりました。

しゅうとめは心配して
「あんた、どうしましたか。どこかぐあいでも悪いのかね」
と、よめにたずねました。するとよめは
「はずかしい話だけど、私は一日に一つ大きなへをこかないと、気分が悪くなるのです。里の母に、よそさまに行ったらへをしてはならないぞ、といわれて、こらえていたのですが、苦しくて苦しくて」
それを聞いたしゅうとめは
「ばかなことを。だれでもへはするもんだ。えんりょしないで、しなさいな」
と、いいました。
「ありがとうございます。それなら、お母さん」
と、いったかと思うと
ボカボカ ボカーン
と、へをこきました。
「なんじゃ、これは。これがへか。かみなりじゃないか」
あまりの大きな音に、しゅうとめは
「こんなへをこくよめは、この家にはおいておけねー」
と、おこってしまいました。

2
しかたなく、むすこはよめさんをつれて、よめさんの里にむかいました。峠にさしかかったときでした。大きなミカンの木に向かって、商人二人がしきりに石を投げています。
石はなかなかミカンにあたりません。それを見ていたよめさんは
「わたしなら、あんなミカンを落とすことなどへでもないのに」
「なに、へでもないだと」
「ああ、あんなミカンすぐに落としてみせます」
「そうか。あのミカンを落とせたら、私たちの荷物をぜんぶ、くれてやるわ」
「荷物ぜんぶですか。それならあぶないですから、遠くにさがってくださいな」
よめさんはミカンの木におしりを向けると
「ボカーン」
とへをこきました。
すると、ミカンがボタボタ落ちました。
「約束どおり、荷物をもらいますよ」
むすめは、二人の商人の荷物をもらいました。

むすこは、「こんな良いよめさんを里に帰すことなんてできない」
と、また来た道をひきかえしました。
商人の荷物には、見たこともない高価な着物が入っていました。
しゅうとめさんは大喜びしました。

3
その後、おしゅうとめさんはよめさんがへをこく場所を、こしらえてやりました。
このへをこく場所を
「へや」というようになりました。
これが、「へや」のはじまりだそうです。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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つか坊と姉ちゃん