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不思議な話

不思議な話

山姥に育てられた児

いすみ市の昔ばなし

むかし、むかし。夷隅町深谷(ふかや)に、山姥が住んでいました。深谷(ふかや)は文字のとおり深い谷がたくさんある地です。その深谷(ふかや)の地に白髪を肩まで乱し、つぎはぎだらけの汚れた着物をまとった山姥でした。家族はなく、人里から離れた山に一人で暮らしていました。
時々、人里にやってくると村の子どもたちは
「やまんばがきたぞ。やまんばだぞ」
「きたねえ、やまんばだぞ」
と、口々にののしり、石を投げつけるのでした。
山姥は、人家のゴミ箱もあざって残飯を麻で作った袋に入れて、谷に持ち帰るのです。山菜や川の魚が採れなくなると、食べ物にこまるので人里から持ちかえった残飯で生活していたのです
あるとても寒い冬げ夜でした。乳飲み児を背負った女が、この谷に迷い込んでしまったのです。谷の奥にある灯のともった山姥の家を見つけました。旅の女は
「夜分、すみません。私は下総の国から、上総の国の浜村という所に行くのですが、道に迷ってしまい夜になってしまいました。どうか、今晩とめていただけないでしょうか」
と、たのみました。山姥は
「ふとんも、おいしい食べ物もここにはありませんが、火はあります。組末な食べ物なら少しはありますだ。外よりはましでしょう。どうぞあがって下さいな。」
と、親切に旅の女を家の中に入れてやりました。女は乳飲み児をおろし、火のそばに近づき、乳をやろうとしました。
が、囲炉裏(いろり)のそぱで、バッタリたおれてしまいました。
「これ、どうなされた。どうなされなした」
山姥が抱き起こすと、すごい高熟です。山姥はすぐに、ワラのふとんに女を寝かせ、谷の水で頭を冷やし看病しました。一晩中、寝ないで看病しました。しかし、翌朝、旅の女は乳飲み児を残して息を引きとってしまいました。後には乳飲み児だけが残ざれてしまいました。
そこで、山姥はこの乳飲み児を、わが子のように大事に育てました。冬の温かい日には、この谷で日なたぼっこをざせている山姥がよく見られました。春になると、おぶって山菜を採っている山姥の姿が見られました。やがて、月日が過ぎ、子どもは一人で山野をとびまわるほどに成長しました。こちらの構からあちらの谷と、春は小鳥を追いかけ、夏は小川の魚を求め、秋は山ぶどうやあげびや柿の味を採り、久、は野うざぎを追いかけるようになりました。里の人々は、いつしか、この谷を「姥が谷」とよび、近くの子どもがよく行く与を「童子谷」と呼ばれるようになりました。
やがて、子どもは大きくなると力の強い若者に成長し、山に住むシカやタヌキやクマやサルやウサギと遊ぶすがたがみられました。時にはかけっこをしたり、すもうをとったりして遊ぶようになりました。子どもの力の強さと頭のかしこさが評判になりました。子どもの強さとかしこさは上総の国はもちろん遠く京の都にもきこえました。この男の子がみなさんごぞんじの昔話に出てくる金太郎だともいわれています。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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つか坊と姉ちゃん