• 楽しい話
  • あたたかい話
  • 悲しい話
  • 怠け者の話
  • 欲ばり者の話
  • 呆れた話
  • 怖い話
  • キツネやムジナの話
  • お化けの話
  • 神様・仏様の話
  • 不思議な話
  • 災いの話
  • 地名の話
  • 戦(いくさ)の話
  • 房総の偉人
  • 房総の史実

神様・仏様の話

神様・仏様の話

罰当たり石

大多喜町の昔ばなし

むかしむかしのことだ。ここ大塚山は大多喜城下へ山の峰づたいに通過する交通の要所であり、人々の往来が絶えなかった。また、この地方には硬い石がなく、唯一弓木から切り出される弓木石といわれる砂岩が民家の土台石として珍重され、この石を牛馬の背にのせ城下へ運ぶ人々の姿をよくみかけた。この山道の端に大きな石があり、その上に道祖神が祭られていたという。
石に刻んだ道祖神も、長年の風雨にさらされ、ぼろぼろに砕け、今は台座の大石だけが残っていた。
村の古老がいうには
「道祖神を刻んだ石は今はねえがこの石には今もちゃんと神様が宿っている。粗末にあつかうでねえぞ」
と若者達に言い聞かせた。
ある日のこと、若者が四・五人たきぎを取りにこの山に登ってきた。その中で村一番の乱暴者といわれる若者が
「じい様がこの石に神様が宿っているとゆうたがあんなのうそだ。神様なんているわけねえ。おれが今ためしてやる」
と、着物のすそをまくり、この石にジャージャーと小便をひっかけた。
おどろいたほかの若者は
「よせよせ罰が当たったらどうする」と止めたが
「なあにでえじょうぶだ、しんぺえねえ」
となおも小便をかけ最後にしりをまくって屁を一発ぶっかけた。
その日の夕方、いっぱいたきぎを背負った若者達が山からおりて来た。その石の所でかの若者が
「見ろ、なんともねえじゃねえか」
と大笑いして帰っていった。
家に帰った若者は出来そこないの味のあまりよくねえドブロクを一杯ひっかけ、飯を食うと大いびきをかき寝てしまった。
翌朝、かわやへ行き用をたしたがいつもとちがい少し様子が変だ。のぞきこんで見ると自分のものが少し曲がっているようだ。
「うううん・・・たいしたことはねえ、気のせいだ」
と仕事に出かけた。
次の朝、曲がり方がいっそうひどくなった。三日目の朝、若者は
「ギャッ」
と悲鳴をあげた。なんと釣り針のように曲がり、用をたすと自分のへそにかかった。
さすがの乱暴者もこれにはおどろき
「オッカー、実はこれこれこういう訳だ」
と、ことのしだいを女房に話した。おどろいた女房が
「それでは二人で神様に謝りにゆくべ」
と次の朝、暗いうちに起き、井戸水を桶一杯にくみ二人でかついで道祖神の所へ来た。折からの残月に照らされた大石に小便のあとがキラキラと光って見えた。
二人はタワシで石をきれいに洗い
「申しわけねえ、二度とこんなばかなまねはしねえから勘弁してくれろ」
と二人で額を地面にすりつけて謝りつづけた。
それから数日すると、少しずつよくなり、半年もすると元通りになった。
「やれやれ、やっとなおった」
と夫婦で顔を見合わせた。
これにこりた若者は心を入れかえ毎日のように精を出すようになったという・・・。
「ん・・・女はどうなるって・・・じい様の話だと一晩でおっぱいがしぼみシワシワになるっちゅ話だが、まだ試した者がいねえからほんとうのことはわからねえ・・・」
大塚山へおいでの皆の衆よ、世の中のルールはちゃんと守って下せえよ。明日の朝、お前様のが曲がっていたらいろいろと困ることがあっぺいよ。

おしまい
(齊藤 弥四郎 編纂)

タグ : 

つか坊と姉ちゃん