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キツネやムジナの話

キツネやムジナの話

カツばあさんとキツネ

大多喜町の昔ばなし

1
ある冬のはじめのことでした。陽ざしはポカポカ、気持ちのよい日でした。
西畑村のカツばあさんは、裏の畑にダイコンをぬきに出かけました。

2
カツばあさんが歩いて行くと、日当たりのよい畑に、一匹のキツネが気持ち良さそうに、昼寝をしていました。これを見たカツばあさんは、
「こんやろう。いつもだいじなニワトリを食ったり、卵を取ったり、困らせやがって。今日は、こらしめてやる。」
と、いって柿の木のそばにあった長い竹ざおを持って来ました。
そうして寝ているキツネにそーっと近づくと、
「こんちくしょう!」
と、力一杯なぐりつけました。
キツネは、ふいになぐられたので、びっくり。寝ボケた顔をして、目をパチパチさせていましたが。カツばあさんに
「家のニワトリを盗ったのは、おめえだろう」
と言われて、カツばあさんが怒っている理由がやっとわかりました。
「おれではありません。物を盗むなんてことはしません。あれは別のキツネです・・・」
「じゃあ、ニワトリのたまごを盗ったのはおめえだろう」
「おれではありません。人様のものを盗むなんて・・・。あれは別のキツネです・・・」
「じゃあ、畑の作物を食い散らかしたのはおめだろう」
「おれではありません。人様が汗水流して作った作物を食い散らかすなんて。
あのいたずらは別のキツネです・・」
と、カツばあさんは次々にキツネのわるさを並べたてました。
しかし、キツネは罪状をならべられると
「おれではありません。・・・あれは別のキツネのしわざです・・・」
といいわけこわけしました。
それでもカツばあさんは、竹ざおで
「こんちくしょう。もう二度といたずらができないようにこらしめてやる」
と、竹ざおを大きくふりあげて、またなぐりかかりました。
キツネはあわてて、逃げ出しました。カツばあさんは
「待てー、このいたずらキツネ」
大声でキツネのあとを追いかけました。でも、きつねの逃げ足の速いこと。カツばあさんにはとても追いつけません。どんどん距離が離れ、とうとうキツネは、山の中に逃げ込んでしまいました。
カツばあさんは、家に帰ると、
「今日は、キツネをこらしめてやった。もう二度とキツネのやつはいたずらをしないだろう」
と、得意になって、手まね足まねで家族のみんなに話して聞かせました。家族のものも
「もう二度とキツネもわるさをしないだろう。おばあさんは、本当に強いこと」
と、家族中でカツばあさんの勇気をほめちぎりました。

3
翌朝、起きてみるとびっくり。寒さなんか吹っ飛んだ。
「ひゃー。ニワトリがやられている。玉子もひとつのこらずやられている」
庭には、血が点々とたれ落ちニワトリの羽根がたくさん落ちていました。庭の畑を見ると、これまた無惨に荒らされています。ダイコン、ニンジン、サトイモ、ネギ・・・がぬかれているではありませんか。
「ああ、何ということだ。丹精こめて作った作物が・・・」
「こりゃあ、キツネのしわざにちがいない」
「キツネのやろう、今度あったら、ぶっ殺してやる」
カツばあさんは山に向かって大声で怒鳴った。カツばあさんの怒りにキツネは
「ははは・・。殺せるものなら殺してみろ・・・」
と大声で笑い転げました。
大多喜町の西畑駅あたりを「キツネッパラ(狐原)」と呼んでいるが、昔、キツネがたくさん棲(す)んでいて家畜(かちく)や畑の作物を荒らし、人々を困らせたのでしょう。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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つか坊と姉ちゃん