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楽しい話

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カニとカエル

御宿町の昔ばなし

1
むかし、むかし。田んぼにカニさんとカエルさんがすんでいました。
カニはおくびょうもので、人が道をとおると
「おお、おそろしい。じしんだ。じしんだ」
といって、ふるえていました。
ところがカエルは、反対に、人間がきても、平気でした。
田んぼのなかでも、道のまん中でも、とびまわっていました。
ぴょんこら ぴょんこら ぴょんこら ぴょん
ぴょんこら ぴょんこら ぴょんこら ぴょん
・・・・
カニは とってもよわむしだ
だけど カエルのおれさまは
こわいものなど ありはせん
ぴょんこら ぴょんこら ぴょんこら ぴょん
ぴょんこら ぴょんこら ぴょんこら ぴょん
・・・・

ある夏の日だった。田んぼの稲はすくすくのびて、風にゆらいでいた。カエルが田んぼから出てあぜみちをとおって小川に行こうとしたとき、ばったり顔をあわせました。
「やあ、やあ、カニさんカニさん。元気かい」
「あああ・・・。カエルさん。このとおり元気です」
と、カニはうつむきながら はさみをふってこたえました。カエルは弱むしのカニをみると、からかいたくなりました。
「そうか、そうか。そりゃあ、けっこうなことだ・・・。」
「は、はい・・・」
「ところでカニさん、こんど、馬がくるそうだ」
「馬が・・・」
カニさんは馬ときいただけで、ぶるぶるふるえていた。カニはあわをふきながら
「カエルさんカエルさん。それりゃ、ほんとかね。わしはこわいから、その日はあなの中ににげますよ」
といった。それをきいたカエルは胸をはり、笑いながらいいました。
「へえ、カニさんはあいかわらず弱むしだね・・・。わしなんか馬なんてすこしもこわくないぞ。馬がきたら、ピョンピョンはねてみせるわい」
「すごい。やっぱりカエルさんは、強いねえ」
カニさんは、うらやましそうにカエルさんの顔を見ました。

2
それから三日後のことでした。
田んぼの道を
パッカ、パッカ、パッカ
パッカ、パッカ、パッカ
・・・・
と、馬のひづめの音がひびいてきました。
カニさんは、びっくりぎょうてん。
「うあー、こわい。こわい・・・」
と、田んぼの中をはいまわって、あなの中ににげこみました。
いっぽう、カエルさんは
「わしにこわいものなどありゃしない」
と、道のまん中をいつものように
ぴょんこら ぴょんこら ぴょんこら
ぴょんこら ぴょん
ぴょんこら ぴょんこら ぴょんこら
ぴょんこら ぴょん
・・・・
カニは とっても弱むしだ
だけど カエルのおれさまは
こわいものなど ありはせん
ぴょんこら ぴょんこら ぴょんこら ぴょん
ぴょんこら ぴょんこら ぴょんこら ぴょん
・・・・
と、鼻(はな)うたをうたいながら、道をとびはねていました。

3
パッカ、パッカ、パッカ
パッカ、パッカ、パッカ
・・・・
と、いう音がとおりすぎました。
あなの中で、ぶるぶるふるえていたカニさんは
「ああ、こわかった。まるで、じしんのようだった・・・。それにしてもカエルさんはほんとうに強いなあ。馬といっしょにピョンピョコとびはねるとは・・・」
と、言いながらあなからでて、道にはい出してきました。
「おや、カエルさんが見えないが・・・。いったいどうしたのだろう」
カニさんはあちこちはいまわって、カエルをさがしました。
しばらくして、カニさんがさけんだ。
「うあわー。どうしたことだ」
カニさんはおどきました。道のまん中で、カエルがぺちゃんこにつぶされていたのでしだ。
「あんなに強いカエルさんがつぶされるとは・・・。馬ってカエルよりも強いのか。それにしてもかわいそうに・・・」
カニは、はさみをふりながら、
ゴソゴソ ゴソゴソ
田んぼにもどっていきました。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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