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戦(いくさ)の話

戦(いくさ)の話

雷台(いかづちだい)

大多喜町の昔ばなし


1
旧大多喜女子高等学校が建っていた高台を「雷台(いかづちだい)」とよんでいる。
なぜこのような地名でよばれているのか、こんな話が伝わっている。

2
天正十八年(1590年)の正月であった。根古屋城主(ねこやじょうしゅ)正木大膳時堯(まさきだいぜんときたか)は、
「いざ、ゆくぞ、時堯のために死ぬる覚悟の者のみ、わがあとにつづけ」
とさけぶと、百騎の兵を引きいて万木城(まんぎじょう)に向かった。
ちょうど、夷隅(いすみ)の苅谷(かりや)にさしかかったときだ。
「正木(まさき)勢を一人残らず討(う)ちとれ」
冬枯れした茅の間から万木の土岐(とき)勢七十騎が攻めてきた。不意の襲撃(しゅうげき)に正木勢はあわてた。
土岐勢は苅谷原(かりやばら)を縦横(じゅうおう)にかけめぐり、大将の正木大膳時堯(まさきだいぜんときたか)を追いつめた。
「逃げるな、ふみとどまれ。御大将をお守りするのだ」
正木勢は必死に抵抗したが、不意の襲撃(しゅうげき)に、みなあわてるばかりだ。
「退け、退け」
時堯はさけんだ。
土岐勢は
「大将の首をとった者には、ほうびをつかわすぞ。追え」
さけびながら必死に追った。
正木軍は逃げに逃げた。しかし、とうとう時堯は土岐勢に取り囲まれてしまった。
時堯は自慢の薙刀(なぎなた)をぶるんぶるんふりまわし、敵兵をなぎたおした。しかし、次から次へと敵兵が襲ってくる。
房総の勇者といわれた時堯も死を覚悟した。その時だ。
暗雲の空から不意に雨が降り出し、稲妻(いなずま)がはしった。あたり一面、銀色に光ったかと思うと
ゴロゴロ ドカーン
すさまじい音がした。
突然の、雷に万木勢は
「退け、退け・・・」
土岐勢が退却(たいきやく)し始め、時堯は九死に一生を得た。
そして、勝敗を決することなく両軍とも引き上げた。

3
この場所が雷台である。今から約五百年ほど昔、根古屋城の正木(まさき)勢、万木城の土岐(とき)勢が戦った戦場だ。
またこのあたりは「船子原古戦場(ふなこはらこせんじょう)」ともよばれ、昔このあたりが戦場であったことを今に伝えている。
おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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