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キツネやムジナの話

キツネやムジナの話

仁平じいさんとむじな

大多喜町の昔ばなし

1
むかし、むかし。
大多喜の山に炭焼きのじいさんが住んでいました。名を仁平(にへい)といいました。
ある冬の夜のことでした。その夜はいちだんと寒く、いろりの火を赤々と燃やし、わら仕事をしていました。わら仕事が終わると、仁平じいさんは楽しみにしている酒を戸だなから出してきて、飲み始めました。酒のさかなはいつものようにめざしです。いろりでめざしを焼くと、部屋じゅうにいいにおいがたちこめました。においにさそわれて むじなの親子がやって来ました。親子むじなは戸のやぶれから、土間に入ってきました。むじなの親子を見てじいさんはいいました。
「おまえたちもめざしが食いてえだな。よしよし」
おじいさんはめざしを二つにちぎり、頭のほうを
「それ、食いな」
と土間に投げてやりました。親むじなは、ひろうと、子どもむじなにやりました。
「子どもに食わせるのか、むじなのくせにたいしたもんだ」
感心して、まためざしを投げてやりました。今度も親むじながひろって子どもにやりました。
「おお、子ども思いだこと。それではまたやるか」
仁平じいさんはまた、めざしの頭を投げてやりました。めざしの頭を何度投げても親むじなは食べずに子どもにやりました。
「おお、ほんとうにえらいむじなだ。これが最後のめざしだ。食べなよ」
最後のめざしを投げてやりました。親むじなは最後のめざしも子どもにやると、山に帰っていきました。

2
その夜ふけのことです。じいさんが寝ようとすると
トン トン トン
トン トン トン
・・・・・・
戸をたたく音がします。
「こんなおそく、いったいだれだろう」
じいさんが戸を開けると
きれいな着物を着たかわいい娘さんが立っていました。その時、プーンとむじなのにおいがしました。(ははあ、むじなだな)と、じいさんはすぐわかりました。
「めざしはもうねえよ」
というと、娘さんはあっという間にむじなになってしまいました。
「あれ、むじなとよくわかったね。さっきは、めざしをありがとうごぜえました。子どもたちがもっとくいてえというもんで、また来てみたが・・・それじゃあ、しかたがねえ」
むじなは、がっかりして山に帰って行きました。

3
つぎの夜のことでした。じいさんはわら仕事が終わると、いつものように戸だなから大好きな酒をだし、めざしを焼いていました。すると、親子のむじながやってきました。ゆうべと同じように、じいさんはめざしの頭をなげてやりました。むじなは拾って食べました。あっという間に食べ終わると、もっと食べたいといったようすでしたが帰って行きました。
そのまた次の夜のことです。じいさんが酒を用意して大好きなめざしを焼こうとしたときでした。大きなむじながとつぜん飛び出して来てめざしをくわえて持って行ってしまいました。
「何というむじなだ。わしの大事なめざしを持っていってしまうとは・・」
「しかたねえ、もう一串だすか」
そういって、また一串だして焼いていました。すると、またむじながやって来ました。
「さっき、おれのめざしを横取りしたのはおめえだっぺ」
「いや、おれでねえ」
「そうか、それならやるか」
そういって、まためざしの頭を投げてやりました。すると、むじなは
「おらあ、頭より胴の方がいい。胴をくれ」
というのです。
「はは、これはさっき、横取りしたむじなだな」
と思いましたが、
「めざしは胴よりも頭がうまい」
といって、頭の方を投げてやりました。

4
その夜のことです。
トン トン トン トン トン トン
と戸をたたく音がしました。またむじながやってきたなと思いながら戸をあけました。すると かすりの着物を着た男の子が立っていました。
「じいさん、めざしくだせい」
「そうか、めざしをくいてえか」
「うん、」
「今、あいにくめざしはねえが栗が焼けたところだ。栗でいいか」
「ああ、栗でもいい」
「それ、栗だ。たくさん食べろ」
じいさんはいろりから栗をひろいあげ、投げてやりました。むじなはひょいとつまんで栗を口にいれました。
アチチチ アチチチ・・・・
あまりの熱さに、むじなはころげまわって逃げました。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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つか坊と姉ちゃん