1
むかし、むかし おんじゅくに おんじゅく太郎という
それはそれは力持ちが住んでおりました。
2
ある秋の日おんじゅくの村が、おおあらしにおそわれました。
「川があふれたぞ。川があふれたぞ」
清水川があふれ、田や畑は水びたしです。
いつもはチョロチョロ流れている そでなし川も水かさをまし、
土手をこえて家々に迫っています。
村人は 土を土手につみあげました。
しかし川の水は かさをますばかりです。
3
「こうなったら、にげるしかない」
「命のほうが大切だ。にげろ、にげろ」
村の人たちはさけびながら、走り出しました。
「太郎や、村を助けてくろ」
村人は力持ちの太郎に おねがいしました。
4
「ようし、おいらにまかせな。」
太郎はなにを思ったか、
「えいっ」とばかりに近くの山をもちあげると 清水川に投げ込みました。
5
さらに、もう一つの山をもちあげ、さきほどと同じように
「えいっ」と大声をあげたかと思うと、山をもちあげて そでなし川に投げ込みました。
すると、水はピタリと止まりました。
6
「助かった。助かった。太郎のおかげで助かった」
村の人たちは大喜び。
太郎に何度もお礼をいいました。
おかげで御宿の村人たちは 命びろいしましたとさ。
おしまい
(齊藤 弥四郎 著)