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怠け者の話

怠け者の話

なまけもの五郎太

いすみ市の昔ばなし

1

五郎太(ごろうた) 五郎太(ごろうた) なまけもの
村(むら)一番(いちばん)のなまけもの
顔(がお)をあらうのも めんどうで
顔(かお)は真っ黒(ま くろ) あかだらけ

五郎太(ごろうた) 五郎太(ごろうた) なまけもの
村(むら)一番(いちばん)のなまけもの

着物(きもの)を替(か)えるのもめんどうで
いつも着物(きもの)はボーロボロ

五郎太(ごろうた) 五郎太(ごろうた) なまけもの
村(むら)一番(いちばん)のなまけもの
働(はたら)くこともめんどうで
きょうも一日(いちにち)遊(あそ)んでる

2
むかし、大原(おおはら)のあるところに、五郎太(ごろうた)という村(むら)一番(いちばん)のなまけものがいた。
「五郎太(ごろうた)、いい年(とし)して 遊(あそ)んでばかりいねえで働(はたら)け」
「五郎太(ごろうた)、もう少(すこ)し身(み)なりをきちんとしな」
「・・・・・・」
と、言(い)われても
「そんなこと、めんどうくせえ」
と、毎日(まいにち)毎日(まいにち)遊(あそ)んでばかりいた。
ある日(   ひ)、町(まち)まで行(い)かなければならない用事(ようじ)ができてしまった。役人(やくにん)からのよびだしだ。五郎太(ごろうた)は最初(さいしょ)
「めんどうくせえ。役人(やくにん)のよびだしだろうと、おいらは行(い)かねえ」
と、遊(あそ)んでいた。そんな、五郎太(ごろうた)を見(み)て村(むら)の衆(しゅう)は
「行(い)かなければ、罰(ばっ)せられるぞ」
「ちょっと行(い)ってくればいいことだ」
と、五郎太(ごろうた)を気(き)づかった。村(むら)の衆(しゅう)があんまり言(い)うので五郎太も行く気になり、
「そんなに言(い)うなら、しかたがない。行(い)って来(く)るか」
と、おっかさんに、にぎりめしをつくってもらった。
なまけものの五郎太(ごろうた)は、自分(じぶん)でにぎりめしを持(も)とうとさえしない。ふところ手(で)をしたまま、つっ立(  た)っているだけである。おっかさんは、にぎりめしを風呂敷(ふろしき)につつむと、五郎太(ごろうた)の首(くび)にかけてやった。
「道中(どうちゅう)、気(き)をつけて行(い)くんだぞ」
「歩(ある)かなければ町(まち)には着(つ)かないぞ。休(やす)んでばかりいちゃ着(つ)かないぞ」
と言( い)って送り出(おく だ)した。五郎太(ごろうた)は首(くび)におにぎりをぶらさげ、ふところ手(て)をして、ぶらーり、ぶらーりと歩(ある)き出(だ)した。

3
やがて、お昼(ひる)になった。
「はらがへったなあ・・・」
と、思(おも)ったが、にぎりめしを首(くび)からとることも、めんどうくさい。あいかわらず、ふところ手(    で)をしながらぶらーりぶらーり歩(ある)いていた。はらは、グーグーなっている。それでもなまけ者(   もの)の五郎太(ごろうた)はふところ手(    で)をしたままである。
ちょうどその時(とき)、むこうから、ぶらーりぶらーり歩(ある)いてくる男(おとこ)がいた。そこで、
「もしもし、すまぬがわしの首(くび)にかけてある、風呂敷包(ふろしきづつ)みを取(と)ってはくれぬか」
と、言(い)った。男(おとこ)はキョトンとして五郎太(ごろうた)をみていた。そこでまた五郎太(ごろうた)が
「いや、わしは首(くび)に昼飯(ひるめし)のにぎりめしをゆわえつけているが、取(と)るのがめんどうくさいのだ。おまえさん、とってくれまいか」
と、言(い)った。男(おとこ)はめんどうくさそうに、五郎太(ごろうた)の首(くび)の風呂敷包(ふろしきづつ)みをとってやった。
男(おとこ)が包(つつ)みをわたすと、ふところ手(    で)をしていた五郎太(ごろうた)はたもとから手(て)を出(だ)した。そうして
「さあ、お礼( れい)だ。にぎりめしを食(た)べてくれ」
と、つつみをひらいてやった。五郎太(ごろうた)はうまそうににぎりめしをほおばった。だが、旅(たび)の男(おとこ)はにぎりめしに手(て)をつけようとしない。
「さあさ、えんりょしないで食(た)べてくれ」
と言(い)うと、男(おとこ)は
「わしは、にぎりめしを食(た)べることさえめんどうだ。すまぬがわしのかわりに食(た)べてはくれぬか」
と言った五郎太(ごろうた)はおどろいたと言(い)ったらありゃしない。
「世(よ)の中(なか)には、なまけものがいるもんじゃ」
と、言(い)ってはあきれかえったと。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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つか坊と姉ちゃん