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神様・仏様の話

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長者のいずみ

いすみ市の昔ばなし

1
むかし むかしのことだ。
大原の布施(ふせ)に ばあさんと 一人むすこがすんでいた。一人むすこは 年ころになると、よめさをもらった。よめさんは やさしいはたらきものだった。むすことよめは 助けあって なかむつまじく くらしておった。
ところが、ばあさんは 一人むすこをよめに とられたような気がしてたまらなかった。それで
「朝はもっと早くおきて すいじをしろ せんたくをしろ・・・」
「そうじのしかたが へただ」
「みそしるの味つけが、こいの うすいの・・・」
・・・・
といって よめさんをこまらせた。それでも、よめは
「はい はい わかりました」
と すなおにばあさんのいうことを きいておった。むすこも
「ばあさんは 年とってわがままになってきたが めんどうみてくれ」
と いって ばあさんをかばってやった。

2
ばあさんは、不平ひとついわず いっしょうけんめいはたらく よめのたいどが 気にいらなかった。そこで、ある日 もっとこまらせてやろうとかんがえた。
「わしは年をとったせいか このところ からだのふしぶしが痛んでしかたない。毎日 ふろにはいりたいので、これから 毎日ふろをわかしてくれ」といった。
このふきんは 水の出がわるく、どの家も こまっておった。遠くの泉まで おけをかづいて 水をくんでこなければならなかった。てんびんをかついで 水をくんでくるのは 女にはつらい仕事であった。しかし よめは毎日 水をくんできてふろをわかし、ばあさんをふろに いれてやった。そうして、ばあさんのせなかをながしてやった。
それでも ばあさんは まだ満足しなかった。いやな顔もみせずはたらくよめに ますますはらがたった。そのうちに、今度は
「朝と昼と晩、三回 ふろにはいりたい。それも 新しいお湯に はいりたい・・・」
と、むりをいってきた。おとなしい よめも ばあさんのこのもうしでにはほとほと こまてしまった。
そこで 近くの観音さまにお願いにいった。
「観音さま、ばあさまが ふろを一日三回 たてるようにいってます。どうしたらよろしいでしょうか。どうか お助けを」
よめは 手をあわせて けんめいにおがんだ。
すると、その夜のことだった。床にはいってねむっていると まくらもとに 観音さまがあらわれた。
「いじわるなばあさんに 不平ひとついわず つかえているのは かんしんである。家の南にある 大樹の下を ほってみるがいい。泉が わきだすであろう」
観音さまの おつげがあった。
さっそく、おつげのとおり 朝早く おけをもって 南がわにある大樹の下をほった。すると、清くすんだ泉が こんこんと わきでてくるではないか。さっそく この泉をくんでかえって ふろをわかした。三日するとふしぎなことが おこった。
それは いままでよめにあんなにいじわるく あたっていたばあさんが、いつも にこにこしているではないか。おまけに いいままでのように よめに いやがらせをしなくなった。そうして、ばあさんは ふろの水くみや家事を てつだうようになった。

3
このあと よめは 畑しごとや野らしごとの時間が たくさんとれるようになった。おかげで くらしは ゆたかになっていった。
それで だれいうともなくこの泉を「長者の泉」と よぶようになった。また この泉をのむと観音さまのごりやくで、やさしい心のもちぬしになるといわれてきました。
しかし ざんねんなことに、この清水は もう残っていない。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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つか坊と姉ちゃん