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神様・仏様の話

神様・仏様の話

だいこんと神様

いすみ市の昔ばなし

夷隅町に、神置(かみおき)という 地名があります。「神を置く」ずいぶん えんぎのいい地名ですね。地名のゆらいは、むかし、この地に 神さまがすんでおられたので、この地名がついたといわれています。

1
むかしむかし、とおいとおい むかしのことでした。神さまがまだ地上にすんでいらしゃったころの、とおいむかしの おはなしです。
神置村のまんなかに、ひの木でつくった 神さまのお家が たっていました。この神さまのお家をまもるように、まわりには けらいのお家がたくさんたっていました。お家には、お米やたべものをたくわえておく倉、いくさにそなえて 馬の倉も たくさんありました。
家のまわりには、田や畑がひろがり、山のふもとに 農家があつまっていました。みんな とてもよくはたらくので、たべものがゆたかで、平和な村でした。
しかし、ときどき このゆたかな村を おそってくる 悪人どももいました。台風や ききんにおそわれた年は、悪人どもが たべものをうばいにやってくるのでした。そんなときは、馬にのった兵がでて、悪人どもをやっつけるのです。そのため、たいへん すみよい村でした。

2
ある 秋のことでした。今年も、しゅうかくの季節が やってきました。はれた日、神さまは 白い馬にのって、
「今年の 米のできぐあいは いかがであろう」
と、二人のけらいをつれて でかけられました。その年は 夏のひでりも、大きな台風もなく、稲は よくみのりました。稲のほは たくさん実をつけ重そうに頭をたれています。
かりいれのはじまった 田んぼでは、おひゃくしょうさんたちが ニコニコしながら はたらいています。神さまのすがたをごらんになると、しごとの手をやすめ、ふかく頭をさげて みおくります。神さまも、一人一人にこたえられて、ていねいに頭をさげて ゆっくりと とおりすぎました。
とちゅう、村長さんのすがたをごらんになると、声をかけられました。
「どうじゃな、今年のしゅうかくは」
「はい、おかげさまで ほうさくでございます」
「そうかそうか、それは けっこうなことだ。これも、村長はじめ、みなさんが いっしょうけんめい はたらいてくれたおかげだ」
「は はい。ありがとうございます」
「からだに気をつけて がんばってくだされ」
神さまは、うれしそうに ニコニコしながら ゆっくり 通ってゆかれました。
田のあぜ道を通りすぎ、すこし 高台になっている畑にでたときでした。ヒヒーン・・・
とつぜん、馬がけたたましい声で いなないたかとおもうと、馬がころがってしまったのです。馬にまたがていた神さまも ころげ落ちてしまわれました。
「だいじょうぶですか。神さま、神さま」
「おけがはありませんか」
二人のけらいは、あわてて 神さまを かかえおこしました。
「ああ、しんぱいらない。だいじょうぶ、だいじょうぶ」
と、いいながら 左目を 両手でおさえられています。
とつぜんのさわぎに、お百姓さんたちが あつまってきました。
「いかがなされました」
「おけがは・・・」
「しんぱいいりません。それよりも、おしごとを つづけてくだされ」
と、おっしゃいました。
しかし 二人のけらいは、まっ赤な顔をして
「いったいだれだ。こんなところに 大根をおいたのは。だれだ」
「茶の木をうえておいたのは だれだ」
「神さまが けがをされてしまったのではないか。いったいだれだ」
と、おこっています。
「このわたしが そそっかしいのだ。大根をおいた人が わるいのでも、お茶の木をうえたものが わるいのでもない。さあさ、おしごとに もどってくだされ」
「・・・・」
神さまは、おこるようすも ありませんでした。

3
その夜、村のひとたちは 村長の家に あつまりました。
(私たちのせいで、神さまが けがをされてしまわれた。これから どうしたらよいか)を話し合うためです。話し合いは
「こまったもんだ。いったい どうしたらよいのだろう」
「ほんとに こまった」
・・・・・
と、みんな こまるだけで、ひとつもいい案が でてきません。けっきょくさいごに村長が いいました。
「しかたない。もう二度と このようなじけんがおこらないように、大根とお茶をつくるの やめよう」
「そうだのう。こんなことがおきないようにするには つくることをやめるしかないか」
と、みんな なっとくしました。
これいらい、この神置の地では 大根とお茶を つくらなくなりました。また、この神置のひとたちは、神さまの子なので、右目にくらべ 左目が少し細い といわれています。茶の木をぬいた畑は「茶ぬき畑」と 今もよばれています。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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つか坊と姉ちゃん