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キツネやムジナの話

キツネやムジナの話

小浦のきつね

いすみ市の昔ばなし

むかし、むかしの話です。
大原の岩船に権兵衛という酒好きな男が住んでいました。
ある秋の日でした。権兵衛は、岩和田の親戚に建前の手伝いにでかけました。一日の仕事が終わり、酒をごちそうになって、ほろ酔い気分で帰る途中のことでした。小浦の浜まで来ると、若い娘が立っていました。
「権兵衛さん、ごくろうさんでした。風呂がわいているから、どうぞ」
と、先にたって歩き出しました。少し行くと
「さあ、どうぞ」
と、言うので、見ると、湯気がモウモウと立っていました。権兵衛は着ていた着物を脱ぐと
ザブン
とお湯に入りました。首までつかって
「いい気持ちだ、いい気持ちだ」
とくりかえしていました。(ところで、見たことのない娘さんだが、どこの娘だろう)不思議に思って
「娘さんや娘さん」
と、よびましたが、返事がありません。
「おーい、娘さんやーい」
と、大声で呼び続けました。いくら呼んでも返事がありません。
ちょうどその時、近くの道を通りかかった近所の人が、その声を聞きつけました。呼び声は、畑の中から聞こえてきます。しかも、権兵衛の声によくにています。声の方に行ってみると、畑の中の肥溜めに権兵衛が入っているではありませんか。
「権兵衛さん、権兵衛さん。どうしたんだい。さあ、、早くあがんなよ」
と声をかけると、権兵衛は不思議そうな顔をして、近所の人の顔を見上げました。近所の人は手を差し出して助けようとしましたが、その臭いのひどいことといったらありません。近くの小川で体を流してやると、権兵衛はようやく正気にもどって、きつねに化かされたことに気がつきました。
岩船と岩和田の間にある小浦には、よくキツネが出て人を化かしたそうです。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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つか坊と姉ちゃん