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お化けの話

お化けの話

養老川のカッパ

大多喜町の昔ばなし


むかしむかし、粟又の養老川にカッパがすんでいました。
いたずら好きな悪いカッパで、夏になると近くを通る子どもを水の中に引っ張り込んでしまうのです。
ある日、村の庄屋さんがカッパを改心させようと、近くの和尚さんに相談しました。
「わかりました。それではさっそく、お経読んで聞かせましょう。たとえカッパでも良心というものがあるはずだ。きっとわかってくれるだろう」
次の日、和尚さんはカッパがよく出る養老川の淵で、お経を読みました。
毎日、毎日つづけました。
7日目が過きた夜。
トントン、トントン。
と、寺の戸を叩く音がします。
「おや? こんなおそくに、だれだろう?」
和尚さんが戸を開けてやりました。するとそこには一匹のやせこけたカッパが月明かりの下でしょんぼりと立っているのです。
その姿はあまりにも哀れでした。
「どうなされた。こんな夜おそくに」
と、和尚さんがカッパを中に入れてやりました。
するとカッパはいきなり畳に手ついて涙をこぼしていいました。
「すみません、和尚さん。わたしは今まで、何人も子どもの命を取ってしまいました。わたしはただのイタズラ心で、悪い事だと思っていませんでした。それが和尚さんのお経を毎日聞いていると、命の大切さがよくわかってきました」
「そうかそうか、気がついてくれたか」
「はい、自分がどれだけ悪い事をしたかも、親の気持ちもわかってきました。これからはもう悪いことはしません」
「うん、よく決心してくれた」
「和尚さん、私は命のある限り殺した子どもたちにわび、ほかの子どもたちを水の事故から守ろうと思います。だから和尚さん、わしを許してください」
それを聞いた和尚さんは、ふかくうなずきました。
「そうか、そうか、よく言ってくれた。これで子どもも親たちも、村中がどれだけ安心することだろう・・・」
それを聞いたカッパは、何度も何度も頭を下げて、川へ帰って行きました。
そしてその時から、子どもたちの水の事故がなくなりました。
人々はカッパに感謝して、毎年夏になると、キュウリやナスやうどんなど、カッパの好物を養老川の淵にお供えしたそうです。
カッパの好物をお供えする風習はなくなりましたが、今もその川淵をカッパ淵とよんでいます。
近くには「粟又の滝」という美しい滝もあります。
 

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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つか坊と姉ちゃん