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不思議な話

不思議な話

スズメのお酒

いすみ市の昔ばなし

スズメの数が減ってきた
最近、スズメの数が減ってきたという。
確かに、わが家のまわりも少なくなったように思う。
群れをなして飛ぶスズメの姿をあまり見かけない。
原因は?
自然環境の変化?そんなものではない。
原因はスズメの世界の酒が少なくなってきたからだ。
こんな楽しいスズメの民話が語り伝えられている。
夷隅地方だけでなく、全国的な民話のようだ。

むかしむかし、貧乏ですが正直者のおじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日、おじいさんがいつものように山へたきぎを取りに行きました。
するとどこからともなく、おいしそうなお酒のにおいがただよってきました。
不思議な事もあるものだ。
おじいさんが酒のにおいにさそわれて歩いて行きました。やがて、竹やぶのに出ました。
すると、びっくり。竹やぶの中には酒だるがあって、スズメたちがそのまわりでチュンチュンとおどっているのです。
スズメたちが楽しそうにおどっている。なんて可愛いスズメたちだ
おじいさんもからだをゆらしながら見ていました。すると一羽のスズメが飛んできて、
「チュン、チュン。さあ、さあ、おじいさんおじいさんお酒を飲んでくださいな。このお酒を飲むときっと幸せになりますよ。チュン、チュン」
と、言うのです。
おじいさんはお酒をごちそうになりました。
「うん、こりゃーうまい。こんなおいしいお酒は、はじめてだ」
心がウキウキ、ワクワクしてくるのです。
すっかりご機嫌のおじいさん。スズメたちと一緒になっておどりはじめました。
♪チュン チュン お酒はうまいぞ、楽しいな。
楽しいお酒だ チュン、チュン、チュン
おじいさんの歌にあわせて、スズメたちもおどりだしました。
もう楽しくて楽しくて、おじいさんは時間のたつのも忘れておどりました。
やがておじいさんはおどりつかれました。
「楽しかった、楽しかった。ありがとう」
おじいさんはスズメたちにお礼を言って、帰っていきました。
おじいさんの家のとなりには、なまけ者の男が住んでいました。
おじいさんの話を聞くと男もそのお酒が飲みたくなってきました。
次の日、山へ出かけていきました。
おじいさんの言うとおりお酒のにおいがしてきました。歩いていくと、おじいさんの言った通り竹やぶがあって、スズメたちがお酒を飲みながらおどっています。
男は、竹やぶに入っていくなり、
「おい、おれにもその酒を飲ませてくれ」
と、言いました。
するとスズメたちは、あわてて言いました。
「人間がこのお酒を飲むととんスズメになってしまいます。やめたほうがいいです。チュン、チュン」
でも男は
「うるさい。はやくよこせ!」
男は酒だるをうばいとると、一息にお酒を飲んでしまいました。
すると、どうでしょう。男はみるみる小さくなっていき、口はとがって、手は羽に変わってきました。そしてついにスズメになってしまったのです。
スズメになった男は竹やぶを追われて、チュンチュンと鳴きながらどこへともなく飛んでいきました。
いっぽう、おじいさんの家ではスズメたちが言ったように良い事が続いて、幸せになりました。

おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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