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あたたかい話

あたたかい話

幸せ貧乏

御宿町の昔ばなし

むかしむかしのことです。
海辺の村に、それはそれは貧乏(びんぼう)なじいさんが、ばあさんとくらしていました。
このじいさんには子どもが大勢いました。子どものために、と朝早くから夕方おそくまで海に出て働き、長者の家に魚を納めていました。
ある日、漁の終わった夜のことでした。長者が言いました。
「じいさまや、ありがとうございました。おかげで今日もたくさんの魚が獲れた。今夜はお礼に一杯やろうと思う。わしの家に来てくれまいか」
とじいさまをよんでごちそうしました。

酒が入ってくると、長者はおじいさまを見ながら、いいました。
「じいさまの幸せに、わしもあやかりたいもんだ」
それを聞いたじいさんは、ポカーンとしていました。
「わしが幸せだと?長者さまこそ、村一番の幸せ者でございましょう?お金がたくさんあって・・・このような立派な家に住んで、美味しいものたらふく食べて・・・幸せではありませんか?」
と、いいました。

長者は、「なにをいう・・・、じいさまこそ、村一番の幸せ者だ。なんといってもじいさまは、人間にとって一番の宝の健康と、二番目の宝である子どもが大勢いるんだからな・・・」
「はあ、このように健康は幸せですが、子どもは多すぎて多すぎて、おかげでお金は右から左へとすぐになくなってしまいますだ。・・・長者さまは、・・・それ、お金ををたくさお持ちで・・・」
「・・・そうじゃ、わしは三番目の宝である、お金しか持っていない。健康もすぐれんし、子どもにも恵まれなかった。そうすると、やっぱり村一番の宝持ちはじいさまだよ・・・」
「そうですか、それはそれはありがとうございます」

酒の宴がおわると、じいさまはニコニコしながら急いで家に帰りました。
そうして長者に聞いた三つの幸せについてばあさんに話しました。
「わしらが村一番の幸せ者か。鎮守様に健康と子だくさんのお礼に行きましょう」
と、その夜に鎮守様に出かけました。

翌日、海にたき木ひろいに出かけたおじいさまは、たくさんのマキをひろいました。
家に帰ってマキをわったらびっくり。中から大判小判がザクザクと出てきました。おじいさまとおばあさまは、びっくりぎょうてん。
じいさまはばあさまにいいました。
「わしらは、健康と子だくさんの幸せ者だ。この上、三番目の宝まで手に入れたら、バチが当たってしまう」
とマキの中から出てきた金を村人にあげてしまいました。
この時からおじいさまとばあさまは、「幸せ貧乏者」と村のみんなからよばれるようになりましたとさ。
おしまい
(齊藤 弥四郎 著)

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つか坊と姉ちゃん